バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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ラーマの食卓【伊藤武のかきおろしコラム】


「ラーマーヤナでインドがわかる!」を企画しています。『ラーマーヤナ』にまつわるダンス、ヨーガ、料理、芸能話をてんこ盛りした、全3回の大イベントです。詳しくは↓
http://blog.goo.ne.jp/akira-65/e/4130ef5a307bffc777c02b919479cc26

わたしにまかされたのは、『ラーマーヤナ』の解説と「ラーマの食卓」の復元。これまで、インド料理研究家の香取薫氏と組んで、約1600年前の「カーマ・スートラの♡料理」、2000年前の「チャラカの食卓」、2500年前の「ブッダの食事」を手がけてきましたが、今度はインド料理ユニット・マサラワーラーのおふたりとともに、さらなる過去へとさかのぼることになります。
『ラーマーヤナ』。敬虔なヒンドゥー教徒は5000年前の史実と信じて疑わないのですが、わたしはラーマの都とされるアヨーディヤーの考古学的資料から、3000年前を設定しています。ウパニシャッド哲学が現在進行形で語られている、後期ヴェーダ時代のことです。
文献資料は、ヴェーダ文献の儀礼の供物にかんする記述ぐらいしかないのですが、それをもとに、『ラーマーヤナ』じたいにはほとんど描かれていない食事シーンについてあれこれ想いを巡らせるのは、なかなか楽しくエキサイティングです。

これなくしてはヴェーダ儀礼にはならない、という供物の筆頭がソーマ。原料となる生薬は、インドでは初いうちに絶滅してしまい、今となっては正体不明ですが、日本にも自生する幻覚キノコのベニテングタケが、おそらくそれであろうと考えられています。この絞り汁を、ミルクやヨーグルトでわったものが、いわゆるソーマ酒ですが、アルコール飲料ではありません。3000年前のラーマの時代、ソーマの原材料はすでに入手不可能になっており、ヨーグルト・ミルク・蜂蜜・大麻をシェイクしたもので、ソーマの代用としたようです。
ヴェーダ儀礼には、動物供犠(イケニエ)がともなわれます。牛、馬、羊、山羊が四大犠牲獣とされ、これらは神に捧げられた後に解体され、串に刺して焼くか、土鍋で炊いて食されました。タマリンドを主とした酸っぱいソースを用いるという記述もあります。スパイスとしては、ショウガやマスタードなどもすでに使われていますから、カレーの原型のようなものも存在していたにちがいありません。当時は肉食のタブーはまったくなく、今のインドからは想像もつかぬことですが、牛と馬の肉がたいへん好まれていました。
酒もタブーではなく、スラー(米のどぶろく)は先祖供養に欠かせぬ供物とされていました。
主食は、米と大麦。どちらもお粥にして食べることが多かったようです。
小麦はあるにはあるが、この穀物は粉にするしか使い道がない。しかし、小麦粉を得る方法は、約2500年前に西アジアでロータリーカーン(回転臼)が発明されるまでは、サドルカーン(現在もインドでスパイスをすり潰すために用いられている石盤と石棒から成る原始的な臼)でガリガリ碾くしかなかった。が、これにはたいへんな苦労が強いられます。したがって、チャパティはまだない。あったとしても、一般的ではなかったはずです。
米は、儀礼のさいには、もっぱらミルクで炊かれ、パーヤサ(乳粥)に製せられました。ラーマ四兄弟も、パーヤサを食べた王妃たちから産まれます。パーヤサに胡麻を混ぜたものをクリサラといい、恋愛成就の呪術(儀礼)に供されました。米と胡麻と組み合わせは、男女の抱擁に喩えられたのです。
乳製品ではサルピス、いわゆる醍醐(だいご)がもっとも重視されました。これは、ギーと似たバターオイルですが、後者と異なり発酵しています。炒った黒米と胡麻をすり潰したものに、粗糖とサルピスを混ぜてダンゴ状にまるめた菓子は、薄くなった頭髪をよみがえらせる呪術の供物でした。

ラーマは、妻のシーター、弟のラクシュマナとともに森に追放されてのちは、狩猟採集の生活です。森の野生の果実や草を集め、鳥獣(おもに鹿や野鶏)を狩って、糧としました。森での料理は、サードゥ(行者)の調理法が参考になります。彼らは、野菜でも芋でも、たき火の燠に埋めて、蒸し焼きにします。ラーマの時代、ジャガイモはないが、ヤマイモ、サトイモ、また芋に似た甘くないバナナはありました。
肉も同様に調理することができます。肉に塩と、あればスパイスやハーブをすり潰したものを塗りつけて、バナナの葉っぱに包んで、蒸し焼き。おいしそうです。中国の乞食鶏(こじきどり)に似ていますが、インドの古典的な調理法の一つです。

さて、「ラーマーヤナでインドがわかる!」(全3回)では、マサラワーラーのいつもの「食べさせられ放題」メニューに、「ラーマの食卓」料理が1、2品プラスされます。『ラーマーヤナ』を、目(ダンス)、耳(雑学)、全身(ヨーガ)、そして舌と胃袋(料理)でもって味わい、古代叙事詩の世界に遊んでみましょう。
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