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バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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クシャラ・スートラカ——アーユルヴェーディック・ラーメン【伊藤武のかきおろしコラム】



クシャラ・スートラ。アーユルヴェーディックな人であれば、ご存知ですよね。
植物を燃した灰を水に浸すと、その水は灰汁(ソーダ)、すなわち強いアルカリ性の水溶液に変わります。生薬の灰でつくった薬用効果の高いソーダをスートラ(糸)に染みこませたものがクシャラ・スートラで、お尻の厄介な病気に対する魔法のような薬です。
しかし、ここでいいたいのは、スートラ(糸)ではなくて、スートラカ(糸のごときもの)。スートラカは、20世紀後半になるまで麺食の習慣のなかったインドのサンスクリットで「ヌードル」を意味する最近の用法です。ならば、クシャラ・スートラカは、あくまでわたしの造語なのですが、うちなーすば(沖縄そば)のような、灰汁をつかったヌードル、いわゆる木灰(もっかい)麺ということになります。
ラーメン独特のコシを生み出すものが鹸水(かんすい)。黄土高原に生える蓬草(ぶんそう、特殊な成分を含んだ雑草)を土に掘った穴に押し込んで蒸し焼きにする。その灰に水をかけると、なぜかカチンカチンの石に変わってしまう。この石の水溶液が鹸水なのですが、手に入るのは化学合成したもので、イヤな臭いもする。
鹸水のかわりに木灰汁を入れたのが木灰麺、ずっと作ってみたいと思っていたのです。沖縄では薪に使うガジュマルなどの灰を利用するそうですが、東京に住んでいれば灰自体が手に入りません。どうしたものかと思っていたのですが……。

アグニホートラ(ヴェーダの護摩儀礼)を実践なさっておられるはりたまさん(
http://blogs.yahoo.co.jp/haritama_hachiouji
)から、ユーカリ、ホーリーバジル、レモングラスなどを燃した貴重な灰をゆずっていただきました。これを水に溶き、1日置いてから濾過し、1割程度の塩を混ぜる。
後は通常の麺うちと同じ。小麦粉(強力粉)に上記の塩入り灰汁を少しずつ加えて、粉になじませ、こねまくる。できあがった生地は、しばらく寝かせたから、麺棒で平たくのばし、折りたたんで、包丁で切る。スープは——
スートラカ(アーユルヴェーディックな麺)だから、インドっぽいのがいい。
そう思い、南インドのスパイシーなトマトスープ、ラッサムで試してみました。ちゃんと作るには、豆のだし(ダールのゆで汁)や生のトマトやタマリンドなどがいるが、わたしが作るのは手抜き。昆布だしとトマトジュースを半々ぐらいに混ぜる。タマリンドの代わりに梅干し。それらを煮た汁に、ニンニク、トウガラシ、クミン、マスタードシーズ、カレーリーフなどを油で煎じたスパイスオイルをじゃっとぶっかけ、コクの出るネパールの黒岩塩と、黒コショウ・クミンのパウダーで調味して出来上がり。コリアンダーの葉っぱ(香菜)をたっぷり入れて、いただきます。結果は——
まずくはないが、面白みもない。スートラカがスープに負けている。スートラカをふつうのラーメンみたいに細くしすぎたのも失敗のようです。クシャラは、麺にコシを生み出す力が、鹸水ほどに強くはない。
思いなおして、うどんのような、あるていど厚みと幅をもたせたスートラカに、和風のスパイススープ——カレーうどんの汁を作ってかけてみたところ、大成功。醤油とカツオだしの和のテイストと、インドっぽいカレーの風味の谷間から、スートラカが力強く立ち上がってくる。讃岐うどんの男っぽいコシとは異なる、たおやかでいて芯のしっかりした、官能的ともいえるコシです。これが、木灰麺の味わいなのでしょう。
そういえば、沖縄そばのスープも、はじめは豚骨を主としたふつうの中国風の汁が、やがてカツオを利かせた和風に傾いていき、こんにちのうちなーすばが完成する。
スートラカは、どうやら和と仲よしのようです。和と印をいかに調和させるかが、わたしにとってのクシャラ・スートラカの今後の課題です。
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Comment

ありがとうございます 

私のリンク先を貼っていただき誠にありがとうございましたm(_ _)m 和印の調和のスートラカ美味しそうですね!アグニホートラ灰でこんにゃくも作ってみたいです。
  • posted by はりたま〜 
  • URL 
  • 2015.02/09 12:23分 
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