バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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ハタ・ヨーガは仏教? それともシヴァ教?【伊藤武かきおろしコラム】


ハタ・ヨーガはいかにして成立したか——をずっと追っています。
それがわかれば、ハタ・ヨーガの真実もわかるであろうから。ハタの成立については学問的にも不明で、わかっていることといえば——。
○ハタ・ヨーガという語の文献上の初出は、8世紀中頃から9世紀初頭にかけて編纂された仏教の『秘密集会タントラ』。その後、『ヘーヴァジュラ・タントラ』と『チャクラサンヴァラ・タントラ』で、チベットへと伝えられることになる仏教版ハタ・ヨーガが展開する。
○ハタ・ヨーガを完成させたのは、12世紀までに現われて、シヴァ教のナータ派というセクトを立ち上げたゴーラクシャなる人物。
それぐらいです。

ゴーラクシャがハタ・ヨーガを語るうえでのキーパースンであることは疑いないのですが、彼がまた謎につつまれている。まずもって、いつごろの人であったかがわからない。
「12世紀までに現われて」と曖昧な書きかたをしたのは、12世紀成立の『84成就者伝』という仏教文献に彼の伝記が含まれているからなのですが、民間伝説では7世紀のネパール(カトマンドゥ)を舞台にした物語にまず現われ、その後1000年にわたって活躍する。
伝説ですから、眉に唾をつけてもいいのですが、信頼できる史料にも彼の名は何世紀も時を隔てて、ちょくちょく現れる。
たとえば、10世紀前半のヒマラヤの王国チャンバの王師をつとめた聖者チャルパティナータ(チャパリパの名で『84成就者伝』にも登場)が、ゴーラクシャの弟子であった。
13世紀後半の聖者ガヒニナータもゴーラクシャの弟子であった、などなど。
15、6世紀の宗教詩人カビールや、シク教開祖ナーナクも、ゴーラクシャと会い、インスピレーションを得たようなことを書いています。不老不死だったのでしょうか?
ゴーラクシャは、シヴァ教徒であると同時に、仏教徒でもあったとされています。
『84成就者伝』に登場する他の著名な聖者(シッダ)では、仏教の『ヘーヴァジュラ』と『チャクラサンヴァラ』の成立に大きく関わったジャーランダラとクリシュナチャーリンが、やはりシヴァ教徒でもありました。この2人は、ゴーラクシャとはライバル関係にあった、というかなり信憑性の高い伝説も残されています。
仏教とシヴァ教は、ハタの成立をめぐって、いかに関係したのでしょう?

わたしは最近、仏教、シヴァ教という括りを設けること自体がナンセンス、と思うようになってきました。
かつての日本人が仏教と神道を同時に信仰したように、仏教とシヴァ教をひとつのものと見る文化が、8〜12世紀の東インドに、確かに存在しました。『84成就者伝』のおもな舞台となったパーラ王国です。そこでは、仏教であり、シヴァ教であり、両者を超越したものでもあるサハジャ教なるものが胎動していたのです。これについては、「ちょこっとサンスクリット」も併せてお読みください。そして、ハタは紛れもなく、サハジャの産物なのです。
9月と10月に、以前別々に解説した『ゴーラクシャ・シャタカ』と『84成就者伝』の関連性をさぐる講義を予定しています。
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