バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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天竺浪人ふらりと来たりて【伊藤武かきおろしコラム】


てんぷら。さくっ、と揚がったヤツはおいしいですよね。
うまく揚げるコツは——
油をたっぷり使うこと。油が少ないと温度管理がうまくいかず、焦げたり、べちょっ、になりがちです。
油を酸化させないこと。対策として、値は張るが、セサミンなどの抗酸化成分をたっぷり含んだゴマ油を使う。最近では独特の香りのない生搾りのゴマ油もスーパーで売ってるから、ふつうの(茶色をした)ゴマ油とブレンドして使えばよい。ゴマ油で揚げたものは酸化しにくいから、冷めてもまずくはならない。また、他の油は揚げ物に2、3回も使えば捨ててしまうが、ゴマ油であれば、減った分注ぎ足すことができるからロスが出ない。それに、ゴマ油には、若返りのビタミンといわれるビタミンEも豊富に含まれている。ならば、けっきょくは得かもしれない……。
以上は、安い油についつい手を伸ばしがちになる自分に対する戒めです。
うまいてんぷらを作るには、もちろん衣(ころも)にも気をくばる必要があります。

さて、てんぷらというと、気になるのがその語源。
ポルトガル語のテンプロ(寺)またはテンポラシ(精進日)であるとか、油を「天麩羅」(あぶら)と書いていたものが「てんふら」と音読されるようになったものだとか諸説ありますが、興をそそられるのが江戸後期の作家・山東京伝が「天麩羅」という名前をつけたという説。
上方から流れてきた浪人者が、今でいうてんぷらを江戸ではやらせた。
「この料理を何とよべばよろしいか?」と問われて、京伝いわく。
「天竺浪人みたいなそなたが、ふらりと江戸にやってきて作ったのだから、てんふらがよろしい。天麩羅と書けば、天は揚がる、麩羅は衣でくるむに通じる」
てんふらという語は京伝以前からあったから、彼が名付け親ということはなさそうです。
いちばん信憑性が高いのは、ポルトガル語のテンペラード(油で調理する)説。これに由来する語は、インドやスリランカにも残っています。テンパーあるいはテンパリング、料理の仕上げのスパイス・オイルをつくる技術です。
とはいえ、天竺浪人説も捨てがたい。天竺浪人って、インドから日本にやって来た流れ者……ではなく、逐電(ちくでん)浪人をひっくり返した言葉だそうで、「今日丑(うし)の日」(=鰻)のコピーを考えた平賀源内の名のりのひとつです。しかし、てんぷらは、ほんとうに天竺からやって来たのかもしれません。
インドの歴史学者K・アーチャーリヤ博士は、インドの揚げ物であるパコラが日本のテンプラのルーツではないかと書いています。
「ポルトガル船はゴアを経由してから、日本に来ている。途中でインドの料理が加わった。船内の調理は、インドの船人に任されることがふつうだからだ。ポルトガル人が、魚のフリットをつくるよう命じたところ、インド人コックはパコラにしてしまった——ということもあっただろう。そして、それはポルトガル人の嗜好にも適った」(吉田よし子著『マメな豆の話』)
たしかに、フリットでは衣はいわば薄衣で大して意味を持っていませんが、パコラもてんぷらも衣でしっかりドレスした揚げ物。衣に大きなウエイトがかかっています。
そして、インドのパコラの衣といえば、前回ちらりと書いたベースン(ヒヨコマメの粉)。
いろいろスパイスを入れればインドの味になってしまいますが、入れなければ日本料理としても通用しそうです。それにベースンは小麦粉ほどに油を吸わないし、けっこうぞんざいに作っても軽く揚がってくれます。まず衣のサクッとした歯ざわりを楽しむ。わたしにとって、大事なテンプラ粉です。
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