バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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*食べ出したら止まらない信玄の干し納豆【伊藤武のかきおろしコラム】*



東京は記録的な大雪とのこと。わたしは北陸の育ちなので、雪じたいは珍しくはありません。小学校に入ったばかりの頃でしょうか、社会科で「東京じゃ10センチも雪が積もると、大雪ちゅうがや」(金沢弁)と習ったときは、遠い異国の話のように思えたものでした。故郷では2メートルでようやく大雪でしたから。
雪の質も日本海側とはまったく異なります。北陸の雪は、空から重そうに一直線に落ちてくるボタ雪。関東は軽く舞うように降ってくるコナ雪。これは、湿度の差なのでしょう。東京で暮らし始めたとき、冬になると、皮膚が乾燥して、ちくちくと痛んだものです。
しかし、乾燥した冬の関東ならではの味があることも知りました。乾物です。寒いから、外に出しておいても腐ったり虫がついたりする心配はない。乾燥していて、晴れていることがふつうだから、速やかに乾く。冬の関東(太平洋側)で作った乾物は味がよい。
牡蠣の干物については、すでに書きました。
キノコ類も、干すことで旨味が増し、独特の歯ごたえが生まれます。ザルにシイタケ(丸ごと)、エリンギ(1本を縦に3つほどに裂く)、マイタケ(丸ごと、あるいは株をいくつかに分ける)、マッシュルーム(縦に4つほどに切る)、シメジ(バラバラにほぐす)を並べて干します。
柚子は皮を薄く剥いて(白い部分は苦くなる)干します。身のほうは、パンストなどにつつんで、入浴剤にします。
これらは冷蔵庫に入れなくても保存がききますので、一年中重宝します。
そして、冬に作る乾物のなかでも、いちばんのお勧めは、干し納豆。茨城の物産展などで売っているヤツですが、これも手作りが楽しい。

まず、パックに入った納豆を大きなボウルに移す。わたしは一度に15パックほど使います。
つぎに、それに、そば粉大さじ2、塩大さじ1強ほど入れて、十分にかき混ぜる。糸を引いて、それにそば粉が絡みつき、ベトベトのドロドロになって、大変なことをしでかしたかのように思ってしまいますが、大丈夫。
このベトベト・ドロドロを、盆(この量だと2枚)に、ゴムベラを使って、なるべく豆粒が重ならないようにして塗り付ける。セメントでも塗っているような感じです。
あとは干すだけ。わたしは、ベランダのエアコンの室外機の上に盆を載せて干しています。2、3日でOKですが、売っているような固いものにするには、5日ほどかかるでしょうか。ドロドロがなくなって、乾いてスリムになった愛らしい豆粒がくっきりと浮かび上がっています。
しかし、盆に本当にセメントみたいにくっついているので、引き剥がすのにけっこう手間がかかる。盆のほうは、水に浸けてから洗えば、きれいになります。

以前、忍者食や兵糧食のことを調べていたとき、「武田信玄の干し納豆」として紹介されていたものを読んで、この作りかたを知ったのですが、まったく同じもの、あるいはよく似たものは、ヒマラヤ東部から中国西南部にかけての、いわゆる「照葉樹林帯」で目にしました。この一帯でも納豆は伝統食ですが、こうしてドライにしたものの方が好まれているようです。スパイスや漢方薬を混ぜたものも作られる。わたしもそれに倣って、ターメリックやユカリを入れたりしています。
酒や茶のおともによし。調味料にもなる。中国料理で頻用される豆豉(とうち。納豆菌ではなく麹やカビで発酵させる納豆。日本の浜納豆や大徳寺納豆に似たもの)も、この干し納豆が原形のようです。
番茶を飲みながらつまむと、ほどよい塩加減の奥から納豆独特の旨味がしみ出してきて、止まらなくなってしまいます。袋から、「これで止めにしよう」と思いながら、ちびちび出して、けっきょく毎回かなりの量をぽりぽり食べしてしまう。15パック分の干し納豆も3、4日でなくなってしまいます。消費に供給が追いつかないので、今回は18パック分仕込んだのですが、乾燥途中で雪が降りやがって……。
雨であれば濡れることのない軒下の干場も、舞うように降ってくる雪に化粧されて、納豆は水浸し。ヘンな味になってしまいました。
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