バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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*牡蠣(かき)の季節【伊藤武のかきおろしコラム】*


カキのサンスクリットはシュクティ(śukti)。といっても、カキだけではなく「真珠を産する貝」が原意のようです(カキからも真珠は採れます)。身は、インドでは……食べたことがありません。カキにかぎらず、インド人は貝をほとんど食べない。食べるのは一部の下層階級だけです。
なぜ食べないかといえば、「汚れた生き物」であるから。たしかに、インドでは、浜辺をトイレの場、と心得ている人びとが少なくはない。そして貝のいる海は、水が貝に濾(こ)されて、浄化される。つまり、貝はケガレを食べている、という理屈になります。
儀式に用いる法螺貝(ほらがい)をはじめ、アクセサリーや漆喰の材料として貝殻の需要は高いのですが、身のほうは見向きもされません。
インドを旅していたころ、貝の味に飢えたものです。(トイレに使われていない)浜辺をすこしほじくると、出るわ、出るわ、5分くらいでアサリがバケツ一杯ほども採れます。自炊道具をもっていましたから、宿に持ち帰り、こっそり料理して(見つかると不可触民扱いされる)、食べたものでした。
鍋に、油、ニンニク、トウガラシを入れて熱し、アサリを入れて蒸し煮にする。ボンゴレ・スパゲッティからパスタを抜いたような料理ですが、インドのアサリは餌が豊富なためか、味がたいへん濃厚。身がぷっくり太っていて、噛みしめると、肉や魚とはちがう貝独特の海くさい旨さがあふれてくる。それこそ、ボンゴレ・スパゲッティを作れば最高です。
カキは、スリランカの東海岸のトリンコマリーで、海水浴をしながら、岩にへばりついているのを石でかち割って、その場で啜(すす)りこんでいました。野生のカキの生は中(あた)ることが多いそうですが、今思うと食中毒にならなかったのが幸いです。若き20代だったからこそできたことです。

さて、カキの季節。各種ビタミン、アミノ酸、ミネラル、タウリン、グリコーゲンなどを豊富に含んでいる。若返り、疲労回復、強肝、美肌などなど、カキの薬効はたいへんなもの。ひとことでいえば、「造血」作用でしょうか。貝が海を浄化するように、血液を浄め、新たに生み出してくれる。体の深いところにエネルギーが充填されるようなかんじです。
毎日食べたいものですが、いつもナベに放りこむだけでは、さすがに飽きがくる。カキ料理の最高峰は、じつは牡蠣フライ——ただし、噛むと熱いオツユがほとばしる揚げたてのもの——だと考えているのですが(賛同してくれるかたは多いはず)、ひんぱんに作るのは面倒である。かんたんに出来るものを紹介します。

お好み焼き:濃厚なカキの味を活かすには、生地も具もシンプルに。生地は小麦粉を水で溶いただけのものでいい。カキ以外の具は、ネギの青いところや細ネギを適当に切ったもの。生地は、小麦粉ではなく、米の粉(上新粉)を使うと、透明感が出て、上品なかんじに仕上がる。どんなタレ/ソースも合う。

そのまま焼き:アルミホイルで作った器にカキを入れ、ガス台の魚焼きグリルで焼く。ポン酢、ユズなどが合う。味噌などを塗って焼くことで、バリエーションが生まれる。

牡蠣とろろ:ナベでカキが余ったら、締めでつくるとよい。カキをナベの湯でさっと湯がいて、包丁で細かく切る。擂り鉢で、山芋の擂りおろしととともに擂る。ナベの湯で濃い味噌汁をつくり、その汁で味を調える。麦メシにぶっかけていただく。

塩辛(略式):塩水で洗ったカキに、酢少量をかけまわし、そのままザルに30分ほど置いて、水気を切る。塩を、カキが500グラムであれば大さじ1強ほど加えて、清潔な手でよくかき混ぜる。密封容器に入れ、冷蔵庫で一晩寝かせれば食べられる。

牡蠣頭打:「かきのかぶち」と読みます。奈良時代の木簡(もっかん)資料にあらわれるカキの干物です。冷蔵技術や交通手段のあまり発達していなかった時代は、カキは干物のかたちで流通していたようです。時代遅れの食べ物ですが、かんたんに出来て、たいへん美味しい。廃れさせるにはもったいない味です。
カキを塩水で洗い、根元の貝柱のあるとこを串で刺して、干し柿の要領で軒下に吊るす。洗濯バサミでやっても大丈夫です。2、3日で、あるいは1日だけでも美味しい干物になります。さっと、炙っていただきます。

塩辛:1日干して半分くらいに縮んだカキで包丁で2つに切り、5〜10%ほどの塩を混ぜて、密封容器に入れ、冷蔵庫に移す。あとはイカの塩辛と同じ。毎日清潔なハシでかき混ぜる。1ヶ月くらいで熟成。イカの塩辛同様にいただきます。たとえば、じゃがバター塩辛。ゆでるか蒸すかチンしたジャガイモを割り、バターと塩辛で食べる。乳製品と海産物の組み合わせはアーユルヴェーダではタブーなのですが、そんなこと気にならなくなるくらいに美味しいものです。
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