バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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えだまめ【伊藤武のかきおろしコラム】


料理マンガで一度は出るのが「塩」のお話。
塩が専売制であったころは、主人公が、料理勝負で、
「合成塩は塩辛いだけだが、昔ながらの天然塩は甘いのだ!」
とシャウトしたものです。
最近では、世界各地で産する塩が話題になります。
同じフランス料理でも、ブルターニュの「ゲランド塩」とプロヴァンスの「カマルグ塩」でつくった料理はまるで違った味になるとか、ベトナムのゲアン省は貧しい地方であるが、ここの海で採れる塩だけは、どんな塩よりもうまかったとか……。
わたしも、いつしか、塩をコレクションするようになりました。
古代アーユルヴェーダの名医チャラカが大絶賛する、パキスタンの紫水晶のような岩塩。
真っ黒で、独特の硫黄臭が野菜の旨味をきわだてるネパールの岩塩。
そのスマしたピンク色のお肌がヨーロッパ料理に似合いそうなモンゴルの岩塩。
故郷・石川県の能都の塩。などなど。
でも、いまの季節はなんといっても、バリの塩。バリ島の豊饒さと、太陽と、そしておそらく聖獣バロンと魔女ランダの霊気が、海水とともに結晶した塩。えだまめとの相性が抜群によろしいのです。

えだまめは、一粒一粒が、ビタミンと旨味をぎっしり詰めこんだ緑のカプセル。毎日食べています。ほとんど主食に近い。
それだけに、茹でかた、食べかたには、ちと、うるさくなりました。
まず、えだまめを大量の塩で揉む。この塩はスーパーで1キロ200〜300円で売ってるにがり入りの塩です。以前はヒマがあるときは、サヤの両端をハサミでカットしていましたが、いまは後述する理由で、これは止めにしました。
次に、いちばん大きなナベに湯をたぎらせ、えだまめを塩ごとぶち込む。ゆで汁の塩分は海水ぐらい。3〜5分間茹で、まだ硬いかな、という段階でザルにあげる。
ウチワで扇いだりはしません。バリ塩をひとつまみ振りこんでから、自然に冷えるのを待ちます。そのころには、余熱と追塩(おいじお)が豆の芯まで染み入っている。そいつを手でつかみ、
じゅばっ、じゅばっ
と啜(すす)りこむ。指で圧された豆が、熱と塩によって活性化したほくほくした旨味のかたまりが、サヤから弾け、口中に飛びこんでくる。サヤのなかに詰っていたこの上なく美味なスープとともに。ビタミンCもたっぷり溶けこんだアムリタ(不老長生薬)です。サヤの両端をカットすると、このビタミンCが湯に溶けて失われてしまいます。
じゅばっ、じゅばっ、と啜りこむには、適度な温度と水気がいる。えだまめは、ゆで立ての人肌がよろしい。じゅばっ、と啜りこんだ後には、じゅるっ、と、つい指まで舐めてしまいます。
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