バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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パドマ padma पद्म्【伊藤武のちょこっとサンスクリット語】


YOGAの人にいいたいこと——前にも書きましたが、
チャクラは「開く」ものではありません。「回す」ものです。どうしても開きたいのであれば、チャクラの代わりに“パドマ”という語を使うことをお勧めします。
padma。√pad(歩く/行く)+ma(水)で「水中を行くもの」。仏典『ミリンダ王の問い』(BC.2世紀頃、西北インドを統治していたギリシア人の王メナンドロス=インド名ミリンダとインド人仏教僧ナーガセーナの対話を編纂した経典)のナーガセーナ長老の言葉を借りれば、
「水中に生じ、水中に成長するが、水に汚染されぬもの——それがパドマである」
つまり、パドマは、蓮華(れんげ)、Lotus(ロータス)と訳される「ハス」のことですが、人体の神秘的中枢をさす語としても古くから、「回転するもの」が原意のチャクラよりもずっと前から、詩的なイメージとともに用いられてきました。サンスクリットのヨーガ・タントラ文献を見ても、チャクラよりもずっと使用頻度が高い。
これを“チャクラ”と呼ぶのは、そこから無数の脈管が伸びている様子が、中心のハブからスポークが放射状に広がる車輪(チャクラ)に喩えられたことに由来するのでしょう。対し、パドマというときは、ハスの蕾のイメージです。
水底の泥のなかに生じ、水中を伸び、空中で美しく開花するパドマは、地界・空界・天界の三界を超越した神の座(padma-āsana;蓮華座)に喩えられることになります。そして、ウパニシャッドは、心臓をこの「パドマの蕾」に比定します。これを開かせる。なぜなら、そこに神であるアートマン(霊魂)がおわしますから。それが、いわゆるチャクラ瞑想の原型です。
この瞑想には通常、ムドラー(手のジェスチャー)がともなわれます。
胸の前で合掌(añjali-mudrā)する。
掌(たなごころ)をふくらませ、合掌した手をハスの蕾のかたちにする(padma-kośa-mudrā)。
そして、両中指の先端を離す。ほころびかけた蕾です。
それから、両の親指と小指は合わしたまま、人さし指、中指、薬指をゆっくりと開いていきます(pūrṇa-padma-mudrā)。両手の10本の指のうち合した親指と小指をそれぞれ1つと数えれば、8枚の花びらをつけたハスの花(八葉蓮華)のすがたとなる。「8」は完全なものを表わす聖なる数。ゆえに八葉蓮華は、もっとも神聖なる蓮華。
ムドラーをともなえば、観想(イメージング)が容易になる。ムドラーを結ぶ両手が、自分の心臓と同調している、と観じることが秘訣です。
そして、開いたパドマのなかに、アートマンである聖なるもののすがたをイメージします。

なお、パドマは、狭義には「赤い蓮華」。サンスクリットでは、色に応じて蓮華を呼びわけます。
カマラ(kamala)も同じく赤。花をさすときは中性名詞ですが、パドマー、カマラーと語尾を長母音化して女性名詞にすると、「蓮華の女神」ことラクシュミーの渾名になります。
プンダリーカ(puṇḍarīka)は白蓮華。サラスワティーとブッダのシンボルで、『法華経』(Sad-dharuma-puṇḍarīka-sūtra)の「華」はこの白い蓮華のことです。
ウトパラ(utpala)は「青蓮華」。青をさらに強調した語がニーロートパラ(nīla青い+utpala)。もっとも、植物学的に青い花を咲かすハスは現在のところ発見されていないため、紫スイレンのことであろうと考えられています。「蓮華のような目」というときには、この語が用いられます
クムダ(kumuda)は「黄蓮華」(白スイレン)で、ヴィシュヌ神と関連づけられています。
また、蓮華の清浄さを強調するパンカジャ(paṅkaja;「汚泥に生じたもの」の意)という言葉もあり、ハタ・ヨーガ開祖ゴーラクシャは、ムーラーダーラ・チャクラをこの語で呼んでいます。
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  • 2016.06/27 05:16分 
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