バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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ジヨーティス Jyotis ज्योितस्【伊藤武のちょこっとサンスクリット語】


サンスクリットの母音は16を数えますが、最重要な母音は a と i と u の3つ。他の母音はこの3つの音の組合わせ、ないしはバリエーションです。前回、aには「在る」という意味(コトダマ)が含まれている、という話をしましたが、では i と u は何か、というと——
i は「行く、動く」。
u は「とどまる、産む」。
正反対の意味です(なお、a、i、u のセットを哲学用語に翻訳したものが、サーンキヤの sattva、rajas、tamas の3つのグナです)。この相反する i と u が合体すると、yu。日本語でも「いう」が「ゆう」になりますが、それと同じです。そして、この yu はずばり「合う、融合する」という意味の語根になります(以下、√は語根のしるし)。
√yu にさらに「産む」を意味する j を添えて√yuj とすると、「融合を産む」で「結ぶ」。その名詞形がおなじみのヨーガ(yoga)です。
j(産む)をyu(合う)の前に移動させて、√jyu で「近づく」。
√jyu に「神」をあらわすtを添え、√jyut「輝く」。なるほど、神に近づくことで、輝くのですね。
映画『マトリックス』で唱われて広く知られるようになったマントラ「アサトー・マー」で、
♪タマソー・マー・ジヨーティル・ガマヤ(われを闇から光に導きたまえ)
と謳いこまれるジヨーティス(jyotis の最後の s は gamaya の g の前では r に変わる)は、この√jyut の派生語。「光、天体」ですが、「神の顕現」(神のほうから近づいてくる)のニュアンスがあります。
光は、より具体的には太陽は、あらゆる宗教において、神の直截なシンボルでした。夜露が朝日の前にはかなく消えていくように、心にしげった暗黒も光に当てられれば散じてゆく。
現在は深夜の0時で日付が変わりますが、古代インドでは日の出をもって、1日の始まりとされていました。そして日の出前に起床し、太陽、すなわち神をお迎えすることが大いなる功徳とされたのです。太陽礼拝にはさまざまな作法がありますが、ヨーガのスーリヤ・ナマスカーラもそのひとつです。日輪に、シヴァ教徒はシヴァ神を、ヴィシュヌ教徒はヴィシュヌ神を観じます。
ジヨーティスのおしりをちょっといじくり、ジヨーティシャ(jyotiṣa)にすると「天文学、占星術」。インドに占いは数あれど、占星術がもっとも権威を得たのは、それが光=神にかんする学問だったからでしょう。
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