バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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【伊藤武のちょこっとサンスクリット語】

ハタ・ヨーガ 

デーヴァナーガリー文字では、हठयोगと書きます。
ハ(ह)の字は、蛇がのたうつように、うねうねとしている。生類の生殺与奪(せいさつよだつ)の権を握る強大なエネルギーを表象したもので、太陽の、とくに乾季のそれの、無慈悲なまでの「熱」の放射をしめすとされています。
対し、タ(ठ)は、物干棒から円(○)がぶらさがったような字。これは月輪。昼間、過剰に熱せられたものを鎮める、夜間の「冷」の原理をあらわしています。
太陽と月の「熱」と「冷」に代表される二元性。われらがよりよく生きるには、そのどちらが勝ってもいけない。両者を中和・融合(ヨーガ、योग)させなければならない。そのための方法が、ハタ・ヨーガの確立者ゴーラクシャによる、このヨーガの定義です。


スーリヤ Sūrya 

太陽の季節! 太陽はSūrya。スールヤと読む人もいますが、rの次のyはiの半母音ですので、スーリヤのほうがよいかと思います。sūは「生む」、rは「火/熱」、yaは「シャクティ(エネルギー)」。「一切を生み出す熱エネルギー」。そのものズバリの名前です。
この目出たき天体の神格化がスーリヤ神。彼の生きとし生けるものに恩恵をほどこす気前のよさをあらわす語がバリ。「与える(bal)神」です。しかし、その気前のよさが仇(あだ)になったこともあったようです。
宇宙の帝王バリ(スーリヤ神)は、いつものように彼を頼ってくるすべての者たちに施しを与えていました。あるとき、身の丈10センチほどのバラモンがやってきました。
「帝王よ。土地を与えてくだされ。この小さな私が三歩で歩ける土地でいいのです」
「よかろう、バラモン殿」気前のいい神は応えました。
と、小人は――いや、太陽の威をねたんだ雨の神インドラにバリの権力を挫(くじ)くよう依頼されて、小人になりすましていたヴィシュヌは、たちまち宇宙神としての無限大の姿をとりもどします。彼は、一歩で天界をまたぎ、二歩で空界を横断しました。そして、三歩目の足をバリの頭に踏み下ろし、彼を地下世界に押し込んでしまったのでした。
ヴィシュヌのズルさばかりが目につく後味の悪い神話です。しかし、大昔にスーリヤを信仰する勢力とインドラを信仰する勢力の衝突があり、前者はインドから駆逐されてしまった。物語はその反映である――と仮定すると、いろんなことのつじつまがあってきます。たとえば――
現在、インドで“スーリヤ”として祀られている神は、ロングブーツをはいて、マントをまとったペルシアの太陽神ミスラのすがたをしています。これは、恩恵を与える神がいなくなるとやはり困る――ということで、新たなる太陽神を異国から招聘(しょうへい)したからです。クリシュナの息子のサーンバがペルシアに行き、ミスラを連れてきた、とされています。
いっぽう、インドを追放されたスーリヤはどこに行ったのでしょう?
もう、お分かりですよね。バリ島です。バリの神話でも、インドから最初にやってきたヒンドゥー神はスーリヤということになっています。


チャクラ Cakra चक्र

“チャクラ”といえば、われわれは人体の神秘的なセンターを思い浮かべますが、この語にはほかにも多くの意味があります。車輪、回転臼、武器としての円盤、渦巻き、時間の周期など。サンスクリットの現代的用法としては、1980年代までのダイヤモンド針でこすって音を出すディスク(レコード盤)も
“チャクラ”。といえば、この語の原義、イメージするものがおわかりになるでしょう。
そう、「くるくる回る」ものが、“チャクラ”。
“チャクラ”の語根(語源となる音声、言葉のタネ)は、kṛ(行なう/為す)。これを「重複」させます。「重複」とは、日本語でいえば、「くるくる回る」の、くるくる、がまさにそう。くる、を2つ重ねて、くるくる。“チャクラ”の場合もkṛを重ねる。kṛ-kṛであれば楽なのですが、k音はc音で重複させるなどの文法ルールを経てca-kṛ
→ cakraとなります。ca音には「円い」というニュアンスがあるから、「なんどもなんども回転する」ようすが目に浮かぶ、絶妙な表現といえます。
“チャクラ”はそのような成り立ちの語ですから、ヨガの人がよく口にするような「開く」性質のものではありません。むしろ、「挿入する」がいい。
現在のCDやDVDもディスク、すなわち“チャクラ”なのでしょうが、ヤントラ(機械)に挿入して使用するため、くるくる回転している様子を直接目にすることができません。ヨーガのチャクラも、これに似ています。
チャクラの絵をみると、全体が蓮華にデザインされています。つまり、円があり、その内側に神仏像や種字が置かれ、外側を文字の書かれた花びらが縁どっています。このようなチャクラの絵を、観想(イメージ瞑想)によって、身体の特定部位に「挿入」して、花びらの文字を右回りになんども誦えることによって「回転」させます。それによって、その部位にプラーナが集まり、チャクラ図に刻まれた情報が立ち上がってくるのです。
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