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作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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【きさらぎの満月通信】

サンスクリットで読み解くアジア 【伊藤武のかきおろしコラム】

「インドネシア語はかんたん。インドネシア語が世界共通語になればいいのに」
と、毎年出かけているバリ島でいつもお世話になっている日本女性のヨウコさん。わたしは、インドネシア語はまるで解さないのですが、きっとそうなんだろう、と深くうなずきました。
インドネシアは1万7000の島々に、2億以上の人びとがひしめく国。600もの異なる言語があります。しかし、これでは同国人同士、意思疎通もできないということで、この国の独立とともに、人工的に作られた「国語」が、インドネシア語です。
もちろん、まるっきり新しい言語ではありません。マレー半島、スマトラ、ジャワ、ボルネオに住んでいるマレー系商人同士の、商売用の共通語がもと になっています。つまり、きわめて実用的である。くわえて修得が容易である。抽象的で、おぼえるのに苦労を強いる言語が共通語になれるはずがありませんか ら。
しかし、千年ほど時間をさかのぼると、東南アジア全域で共通語の地位にあったのは、サンスクリット語でした。つまり、サンスクリットはじつは簡単だ、ということです。
その後、イスラムや民族主義が台頭してサンスクリットは廃れてしまいますが、スリランカ、ビルマ、カンボジア、タイ、ラオスの上座部仏教の僧侶た ちは、現在でもサンスクリット、ないしはパーリ語で会話をしています(サンスクリットは大乗仏教の言語ですが、上座部の僧侶はサンスクリット会話も学ぶそ うです)。
この話題は以前にも触れているので、ここではサンスクリットが共通語であった時代の痕跡である地名に注目してみましょう。

東南アジア全体は、スヴァルナ・ブーミ(黄金の土地)ないしはスヴァルナ・ドウィーパ(黄金の島)。インド商人は東南アジアの富――スパイス、香木、宝石、錫などの金属――を求め、紀元前からベンガル湾やインド洋を行き来していました。
インドから東に真っすぐ航海すれば、「スマトラ沖地震」で有名になったスマトラ。梵名はサムドラ(Samudra、海)。海を渡ったところにある 島だからサムドラなのだ、と説明されますが、わたしは「ウドラ(Uḍra、インド東海岸のオリッサの古名)人の集まる(sam)ところ」と解釈していま す。インドから最初にスマトラに移り住んだのは、紀元前3世紀、アショーカ大王に国を滅ぼされたはオリッサの人びとだと考えられています。ともあれ、サム ドラが訛ってスマトラです。
インドネシアの中心となる島がジャワ。6世紀まで、スマトラとジャワは1つの島だったのですが、火山の噴火と地震で切り離されてしまいました。こ のときも大津波が起こり、インドに甚大な被害を与えたようで、インド東海岸の沖には古代の町や遺跡がたくさん沈んでいます。ジャワの梵名はヤヴァ (Yava、大麦)。なお、YavaをJawaと発音するのもオリッサ訛りです。
ジャワの東隣の島がバリ(Bali)。太陽神、生け贄、施餓鬼(せがき、下級霊に供物を与えること)などの意味があり、なるほど、と妙に納得してしまいます。
ボルネオはヴァールナ・ドウィーパ(Vāruṇa-dvīpa、海神の島)のヴァールナの訛り。
大陸部では、ビルマはブラフマ・デーシャ(Brahma-deśa、ブラフマ族=ビルマ族の国)。
タイの古名シャムはシヤーマ(Śyāma)。「黒い」という意味で、緑濃い水田を謳った言葉といわれていますが、じっさいはタイ族の呼び名であるサームないしはシヤーム、サヤームにそれに近い梵語を当てたものです。
カンボジアは、マレーシアは、マラッカは、シンガポールは……などと書くつもりでしたが、これではキリがありません。3月3日、「まとめてサンス クリット語講座」を予定しています。こうした話題や“コンピュータ”などサンスクリットの現代用語にも触れてみます。初めてのかたでも大丈夫な「やさしいサ ンスクリット」がモットー。興味あるかた、お待ちしています。
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