バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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イーシャ Īśa ईश

イーシャ Īśa ईश 【伊藤武のちょこっとサンスクリット語】

イエス・キリストとおぼしき聖者が『バヴィシュヤ・プラーナ』(10世紀頃成立?)というサンスクリット文献に登場します。その名もイーシャ・プトラ(Īśa Putra)、ないしはイーシャ・マシーハ(Īśa Masīha)。
イーシャは、サンスクリット語で「神」。しかし、この場合には、イエスのインドでの呼び名である“イーサ”が掛け合わされています。プトラは「息 子」。マシーハは、ヘブライ語のマーシアハ(メシア)のサンスクリット訛り。「(油を)塗られた者」が原意ですが、「救世主」の意に転じ、ギリシア語のク リストス(キリスト)と同義になります。すなわち、イーシャ・プトラで「神の子(イエス)」、 イーシャ・マシーハで「救世主(キリスト)であるイエス」。
『バヴィシュヤ・プラーナ』によると、インドからムレーッチャ(野蛮人、異教徒)を追い払ったサーリヴァーハナ王が、カイラーサ巡礼中に、この イーシャことイエス・キリストと出会います。イーシャは、王に、自分が野蛮なムレーッチャにヴェーダにもとづく正法をひろめたことを、そしてその教えを、 諄々と語るのでした。
431年にローマ教会から異端の烙印を押されたネストリウス派(中国史料にいう景教)が、東方伝道に力を注ぎましたから、そうした布教者のひとりがイーシャとしてプラーナ文献に記録されたのでしょう。
しかし、イエス本人がインドでヨーガを修行した、という伝説も、インドでは古くから流布していたようです。そうした伝説では、イーシャという名はイーシャーナ(シヴァ神)にちなんで付された彼のホーリーネームであった、とされています。つまり——
イエス・キリストはヨーギンである!
キリスト教はヒンドゥー教の分派である!
この説は、19世紀から20世紀初頭のイギリスの圧政に苦しむ植民地インドの宗教家に、大きな希望を与えました。『ヨガナンダの自叙伝』で知られるパラマハンサ・ヨーガーナンダも、これを確信し、自身の教説の中核に据えたひとりでした。

イーシャ。√īś(支配する)を男性名詞化した語で、「神」のほか「夫、主、王」の意もあります。
イーシャの義を強めた語が、イーシャーナ(īśāna)、およびイーシュワラ(īśvara)。意味はいずれも、前者と同じく「夫、主、王、神」ですが、「至高者、自在神」のニュアンスが強い。シヴァ神の異名のひとつですが、クリシュナをさすこともあります。
また、“イーシュワラ”は、他の語と結びついて、シヴァ神の渾名(エピテット)を形成します。
マヘーシュワラ(mahā-īśvara)で、「偉大なる神」。
ブヴァネーシュワラ(bhuvana-īśvara)で、「宇宙の主」。
ヨーゲーシュワラ(yoga-īśvara)で、「ヨーガの神」。
アルダナーリーシュワラ(ardha-nārī-īśvara)で、「半分女の(両性具有の)神」。
仏教の観音さまも、アヴァローキテーシュワラ、すなわち「下界(ava)を観察し[て涙をはらはらと流され]た(lokita)イーシュワラ」が本名です。
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