バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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マンダラ Maṇḍala मण्डल

マンダラ Maṇḍala मण्डल 【伊藤武のちょこっとサンスクリット語】

「曼荼羅」として、とっくの昔に日本語化した梵語。密教の解説書には、決まって、空海の、
「マンダは『本質』、ラは『持つもの』。ゆえに、マンダラとは『本質を持つもの』の義」
という語源解釈が付されていますが、サンスクリットの辞典にはこのような解釈は見られません。マンダラは√maṇḍ(囲む/飾る)+la(地)で、「囲まれた/飾られた地」が原意。
しかし、だからといって、「マンダラ=本質を持つもの」が誤りというわけではありません。インドのサンスクリットの伝統でも、このようなコジツケに近い語源解釈はごくふつうに行われています。
たとえば、「肉」をあらわすマーンサ(māṃsa)。√man(礼拝する)+sa(神)で「神への捧げもの」(すなわちイケニエ)が原義なのでしょうが、有名な『マヌ法典』には、
「この世において、そのものの肉を食う我を[mām]、彼は[sa]あの世において食うであろう。これがmāṃsaの肉たる意味である——と賢者たちはいう」
と、マーンサの新しい語源解釈がなされています。つまり、ウシを食えば、来世にはそのウシがおまえを食うのだぞ、と脅しているわけです。『マヌ法 典』が編纂された西暦紀元前後のインドは菜食主義が広まりゆく時代で、このような解釈も歓迎されました。そして、パンディタ(学者)たちにひろく認められ れば、その解釈が権威となるのです。

それはさておき、サンスクリットの“マンダラ”は、形容詞としては「まるい、円形の」。名詞としては、いわゆる曼荼羅(インドの曼荼羅は地面に描かれる)のほか多くのものを意味する言葉となりますが、それらのニュアンスは「円形、壇、群」に収斂されるかと思います。
さらに云えば、マンダラのコアとなるイメージは、おそらくはヴェーダの祭壇でしょう。インド数学の基本は幾何学ですが、それはヴェーダの祭壇建立にともなって発達しました。
ヴェーダの祭壇は、次のようなプロセスを踏んで築かれます。

(1) 地面に棒を立てた日時計を使って、東西と南北の軸線を引く。
(2) 東西-南北の軸線の交点に棒を立て、その棒にロープを結んで、ぐるりと一周し、円(マンダラ)を描く。つまり♁というかたちになる。
(3) 円の内側に正方形を描き、そのプランに沿ってレンガを積上げ、祭壇を造る。
(4) ♁の中央に祭火の炉(護摩壇)を築く。

ヴェーダの祭壇は、宇宙の象徴です。その中央で燃える祭火(護摩の火)は、太陽系における太陽に相当します。
このヴェーダの祭壇を築くプロセスはその後、寺院や曼荼羅の建立に継承されました。
つまり、まず東西-南北の線(これを「梵線brahma-sūtra」という)を決定し、その交点を中心点にして円を引く。そして、その内側に正方形を描き、それに沿って寺院の壁が造られる。曼荼羅の場合は、全体を囲む線が引かれる。
寺院や曼荼羅のなかでは、神やホトケたちが群れています。中央——ヴェーダの祭壇では祭火のあったところには、本尊がおわします。ゆえに、マンダラは「本質を持つもの」とも解釈されうるのです。
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