バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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はづきの満月通信

【伊藤武かきおろしコラム】


コブラの季節


インドは、ホット・ホッター・ホッテストの3つの季節しかない、なんてことを云うひともいますが、そんなことはない。冬至からスタートして、
シシラ=涼季(だいたい1〜2月)、
ヴァサンタ=春(3〜4月)、
グリーシュマ=夏(5〜6月)、
ヴァルシャ=雨季(7〜8月)、
シャラド=秋(9〜10月)、
ヘーマンタ=冬(11〜12月)、
の6つの季節を数えます。
バーラフマーサ(「十二ヶ月の詩」)という、人の心の動きを季節の移ろいに重ねてつづる繊細な詩や絵画の形式も発達しました。ヨーガのスーリヤ・ナマスカーラ(太陽礼拝)も、1年のめぐりをアーサナでつづる身体の詩。牡牛のポーズ、下向きの犬のポーズと続き、八体投地して最高の敬意をしめすポーズが、ちょうど今ごろを表わしています。
7月。日本の梅雨どきは、インドも雨季の真っ盛り。うっとうしい、なんて思うひとはいません。
干涸びていた大地が、しっとりとした娘の肌のような潤いを取りもどす季節。
白茶けていた景色が、雨を浴びて、瑞々(みずみず)しい色彩に着替える季節。
濃い緑の葉のはざまから覗くマンゴーの実が、宝石のようにきらめく季節。
待ちに待った生命が更新する季節。
けれども、雨季ならではの厄介ごともないではありません。田舎では、夏眠していた蛇が地面からニョロニョロと湧いてきます。インドで蛇といえばコブラ。もたげた鎌首に目玉模様を浮き立たせ、二股の舌をチロチロと吐いて威嚇します。
森に住むサードゥから聞いた話ですが、コブラは雨季になると庵のなかにもしばしば侵入してくる。が、彼は慌てない。
「わしはおまえに危害を加えない。安心しなさい」
といいきかせて、鎌首を撫でてやる。蛇は猫のように喉をゴロゴロいわせる。そして行者が、
「チョロ、チョロ(「もう行きなさい」の意)」
というと、名残惜しそうにふり返りながら去っていくとのこと。コブラの円(つぶら)なガラス玉のような目を見ると、こいつらとコミュニケーションすることなど不可能と思ってしまいますが、そうでもないようです。
しかし、咬まれる人も後を絶たない。これまで何度か触れたホーリーバジルは、このようなときも大活躍します。ホーリーバジルの葉とギーのペーストを咬傷に塗る。と、ペーストは毒を吸い出し、黒く染まる。そのあと、ホーリーバジルの葉を大量に食べれば、蛇毒はほぼ完全に中和されるそうです。
スーリヤ・ナマスカーラの八体投地につづく蛇のポーズが、この季節の地から湧きだすコブラを表現しています。もちろん生命力、シャクティ、クンダリニーの象徴なのですが、扱いは要注意、ということも暗示しているのでしょうか。
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