バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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【うづきの満月通信】

【伊藤武かきおろしコラム】


桜色のパスタ



柚餅子(ゆべし)、アンチョビとつづけた食い物ネタが好評のようなので、いま少しつづけましょう。
わたしにとって、ほとんど主食といえるのがスパゲッティ。そこで、手が空いたときに、パスタを打っています。なあに、大した手間ではない。
むかし、粗大ゴミの日に入手した捏鉢(こねばち)に小麦粉をぶちまけ、卵、水、塩、オリーブ油を入れ、あるいはホウレン草のペーストかトマトジュースも加え、こね合わせる。こねてこねてこねまくる。そばを打つには熟練を要するが、小麦粉はこねさえすればカッコがつく。生地の艶と弾力が、イタリア人のいうところの「若い女のおしり」のようになればOK。ここまでで、約20分。
この20分が、メンドウだ、と思われるようであれば、後の至福――生パスタ独特の、もっちりとした弾力が歯にはねかえってくる咀嚼の快感と舌の歓びは得られません。これに比べれば、乾麺のスパゲッティは代用品と思うしかありません。
それに、小麦粉を袋の2/3ほど打っておき、冷蔵庫に入れておけば、毎日食べても1週間ほどもちます。もっとも後半は生地はダレ気味になりますが、それはそれで使い道があります。チャパティにしてもいいし、手で引きのばして湯豆腐の鍋にでもぶちこめばスイトンになります。
スパゲッティの場合は、打った生地はしばらく室温で休ませてから、テーブルの上でめん棒で薄くのばして、折りたたんで、ひもかわ状(フェットチーネ)に切る。生地を均等にのばすには、めん棒は長いほうがやりやすい。わたしは杖術(じょうじゅつ)の杖を使っています。
生パスタは乾麺とちがって、すぐにゆであがります。いまの季節は、トマトジュースでこねたものが楽しい。火が通るとつややかな桜色に染まり、見ているだけでも幸せな気分になります。

若いころインド料理にはまり、チャパティを打つのも、うどんを打つのも変わらぬだろうということで、パスタづくりも始めたわけですが、失敗もありました。
安アパートの南の塀がブドウの生け垣になっている。秋にはたわわに実るが、渋味がつよく、小鳥が食い散らかすほかは誰も食べようとしない。大家さんが、
「自由にしていいよ」
というので、ワインをつくることにしたのです。ブドウは潰しておけば、1週間ほどで酒に化ける。
つぎは熟成。ゴミ捨て場からコルクの栓のついたワインの空きビンを拾ってきて、新酒を詰める。約10リットル分、10数本のビンが並びました。が――、
ドッカーン!
それらのビンが爆発したのです。といっても、発酵ガスでコルクが吹っとんだていどですが、夜中寝ているときに、ロケット弾でも撃ちこまれたような音が轟いたから、大変。心臓は止まりそうになるし、ビンから溢れだした発酵液で、部屋中酒びたし。それも血のように真っ赤なブドウの汁。惨劇が行なわれたようなありさまです。
そうして部屋中が酵母菌の棲み家になってしまい、以後、チャパティやパスタをつくるために打っておいた生地までが、不義の子を孕んだ女の腹のように、ブクブクとふくらんでいくのでした。






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