バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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アムリタ Amṛta अमृत 【伊藤武のちょこっとサンスクリット語】

アムリタ Amṛta अमृत

アムリタのaは否定、mṛtaは√mṛ(死ぬ)の過去分詞。すなわち「不死」。通常、インド神話の神々の愛用する「不死(不老強精)ドリンク」の意で用いられます。ヨーガでは、額の奥から分泌される濃厚な脳内麻薬が、このアムリタに喩えらています。
アムリタは、漢訳して「甘露」(かんろ)。といえば、わたしは、醤油とたっぷりの砂糖で、飴色に煮染めた岩魚の甘露煮を思い浮かべてしまいます。田舎の母が生きていたころ、よく送ってくれたな、などと。郷愁しみいる響きです。
アムリタは、英訳して“ネクター”。そういう名の果汁ドリンクもあって、口中に、桃色をした、さわやかでフルーティーなうるおいが涌いてくるという人も多いことでしょう。
それでは、インド人は、アムリタをどのような味の飲料と理解しているのでしょうか?
(1) ちょっと酸味のある濁酒(どぶろく)
(2) 苦みばしった薬草茶(ハーブティー)
(3) ダシのきいたキノコの汁

答えは、どれもが正解。
アムリタの直接のモデルは、ヴェーダ時代(ブッダ時代以前)に飲まれていた幻覚飲料ソーマ。原料となる生薬は、インドでは乱獲が災いして初いうちに絶滅してしまいますが、日本にも自生するベニテングタケ(赤いカサに白いポッチが散らばっているキノコ)が、おそらくそれであろうと云われています。幻覚性の毒キノコですが、塩に漬けるなどして毒抜きすると、食用になります。旨味成分はシイタケの10倍もあるとか。これでつくった田舎蕎麦(いなかそば)などは、もう天下一品の味わい。ただし、山奥に住む知人によると、毒抜きが不完全なためか、たまにラリッてしまうそうです。
毒抜きしていないこいつの絞り汁を、ミルクやヨーグルト、スラー(米の濁酒)などでわったものが、ヴェーダに謳われるソーマ。もっとも、キノコにせよ、濁酒にせよ、現代のほとんどのインド人には、縁あるものではありますまい。
インドで、ソーマの原材料が入手不可能になってからは、代用ソーマをつくる試みがさかんに行われるようになります。それが、アーユルヴェーダの起源のひとつです。ヨーグルトに、蜂蜜、健康に有益な薬草の煎じ汁、大麻をくわえてシェイクするというパターンが多かったようです。

さて、現代。
ラッシーは日本でもすっかりポピュラーな飲み物となりましたが、暑いインドで初めてこれを飲んだときの感動は今も忘れません。道ばたに屋台を構えた牛乳屋のオヤジが、壺にヨーグルトと砂糖と砕いた氷を入れて、ガシャガシャと攪拌(かくはん)し、できあがったものを赤い土のカップに注いでくれます。
ゴクン、ゴクンと飲みほすと、一口ごとに身体に力がみなぎってくるような気がします。まさに、
「甘露(アムリタ)の味!」 
と思ったことでした。
以上――ヨーガで、“アムリタ”を観想するときの参考にしてください。

  
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