FC2ブログ

バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

Entries

【マルマヴィディヤー】コラム



アーユルヴェーダは、内科のチャラカと、外科のスシュルタに大きく二分されます。現在行なわれているのは主にチャラカ系であり、スシュルタ系はほとんど顧みられていません。しかし、ハタ・ヨーガと併せて学ぶのであれば、スシュルタにこそ注目すべきでしょう。
なぜなら、ハタ・ヨーガを行じるさいに求められる微細身――プラーナの流れる脈管やチャクラから成る身体は、外科の根本文献『スシュルタ・サンヒター』を第一次資料とする「マルマ論」にもとづいているからです。

マルマという語の初出は『リグ・ヴェーダ』。神々の王インドラが、竜神ヴリトラのマルマを攻撃して、これを殪した、という伝説。『スシュルタ』はその3千年後に、戦場で負傷兵の体を「切ったり貼ったり」する従軍医師たちのマニュアルとして編まれました。
「マルマ論」は、それぞれのマルマの構造(筋肉、脈管、靱帯、骨、関節)、そこを負傷したさいの結果(その日のうちに死、2週間以内に死、矢を抜くと死、障害が残る、激痛をもたらす)を中心にまとめられています。その記述はきわめてシンプルです。たとえば――

 第三指の延長線上の足の裏の中央にあるは、タラフリダヤなる名のマルマ。
 筋肉から成り、大きさは半指幅。そこを断たれれば、激痛により2週間以内に死。
 ……そこを断たれた者の足は、足首の処でただちに切断すべし……それにより患者は、
 最大の不幸(死)を迎えことなく、枝を落とした木のごとく、存(ながら)える。

そうしたマルマが107列挙されています。

 破(や)れ折れした内臓や頭や頭蓋であっても、その身への外科の処置によって、存えうる。

従軍医師たちは、『スシュルタ』の記述にもとづき、負傷兵の救済に尽力したのです。
しかし、マルマの位置については、『スシュルタ』の記述に曖昧なところがあるため、また高度なサンスクリット解読能力が要求されるため、インドの医師や武術家、研究者のあいだにもかなりの異同があります。それを、大幅に修正にしてくれたのが、前回述べたJ・N・ミシュラ著『マルマとそのマネージメント』(MARMA And Its MANAGEMENT)。
解剖学者であるミシュラ博士は、十数体もの献体を解剖して、『スシュルタ』にしるされるそれぞれのマルマの構造、損傷の結果と照合し、その位置を現在の解剖学における学名と同定しました。
マルマ論は、古代インドの従軍医師たちの数千年にわたる患部の観察の蓄積といえましょうが、同様の蓄積が現代にもあります。建国以来、戦争を国是とするアメリカは、戦死傷者の死因や治療にかんする膨大なデータを保存しています。
ミシュラ博士は、それとも照合し、『スシュルタ』の記述が正確であることを証明しました。
前記のタラフリダヤ。そこを貫かれたら、さぞかし痛いことだろうが、ほんとうに死にいたるのだろうか? ところが、アメリカの記録によると、その部位を損傷した者は、破傷風(はしょうふう)に罹患する可能性がきわめて高くなる。そして破傷風を発すると、まさしく「激痛により2週間以内に死」。
『スシュルタ』は、マルマの神秘の背後に、プラーナの存在を確信していました。彼は、マルマを、
――自然的かつ特殊的なプラーナの座。
と定義しています。
しかし、プラーナの座であるマルマとマルマがどう繋がっているのか? 
そして、どのような全体像を描いているのか? 
スシュルタ学派は解剖も行ないましたが、そうしたことは屍体からはうかがえません。
そこで、かれらは、あるいは武者や行者たちは、おのれの身体の相当部位に意識を凝らすようになります。瞑想する、あるいは霊視する、ということです。それが古代人のやりかたでした。
微細身は、そうして見出されたのです。

さて、YAJでは、6月8、9日(土日)に、高尾山合宿「マルマヴィディヤー(マルマの科学)」を予定しています。お配りする冊子『マルマヴィディヤー』(有料)には、『スシュルタ・サンヒター』の「マルマ論」の原文と直訳文を収録します。
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

インド作家_伊藤武(クルシー)

Author:インド作家_伊藤武(クルシー)
 
メルマガ『満月通信』のコラムを載せていきます。
 
講座案内等はこちらでお知らせしています。
http://malini.blog105.fc2.com/

お問い合わせはこちらまで。
yaj612@gmail.com

twitter

最新記事

最新トラックバック

右サイドメニュー

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR