2019.01/31 [Thu]
【ゲーランダ・サンヒター】コラム
YAJ定期講座の『ゲーランダ・サンヒター』が修了しました。
「ゲーランダ先生、わたしにホンモノのハタ・ヨーガをお教えください!」
そういって、一国の王であるチャンダカーパーリがゲーランダ師の門を叩く場面から、この聖典は始まります。
ヒンドゥーとイスラムの葛藤が泥沼化し、さらにインドの植民地化をもくろむヨーロッパ列強が台頭をはじめる17世紀のベンガルが舞台。
ほんらいナータ派という一宗派のヨーガであったハタ・ヨーガも、ほとんどあらゆる宗派に採用されたがために、雑多な教えが混じりこみ、渾沌としたものになっていました。だからこそ、王はホンモノを求めて、正統を伝えるゲーランダ師を訪ねたのです。
「その心がけ、あっぱれである」
聖者は王を弟子として受け入れ、王は政務の合間を縫って、師のもとに通う――というのが、この聖典の状況設定。そして、「忙しい王様(ラージャ)でもできるシンプルなヨーガ」がサンスクリットにおける“ラージャ・ヨーガ”の真意。今日のわたしたちに求められるのは、この意味でのラージャ・ヨーガなのかもしれません。
もっとも、ゲーランダ師はナータ派の聖者ではありません。ヴァイシュナヴァ・サハジヤー(ヴィシュヌ教サハジャ派)、いわゆるバウルに属していました。http://itotakeshi.blog33.fc2.com/blog-entry-152.html
また、ゲーランダ自身は、“ハタ・ヨーガ”という語を一度も使っていません。“ガタスタ・ヨーガ”と称しています。「壺で在るためのヨーガ」でしょうか。この壺は、おそらくカラシャ(ご神体としての壺)を表わしています。おのれの身体を神を入れる容器とする。
壺、カラシャは次のような順で造られます。
①粘土をこねて、②ろくろで壺の形を引き出して、③タタいて形をととのえ、④乾燥させて、⑤焼き、⑥最後の仕上げをして、⑦神を容れるカラシャとする。
ヨーガもこの順で説かれています。
⑴シャトカルマ、⑵アーサナ、⑶ムドラー、⑷プラティヤーハーラ、⑸プラーナーヤーマ、⑹ディヤーナ、⑺サマーディ。
①の粘土をこねるは、⑴の身体をこねるシャトカルマに相当します。シャトカルマはアーユルヴェーダのパンチャカルマのヨーガ・バージョン。クヴァラヤーナンダは、『ゲーランダ・サンヒター』のこの部分を深く研究することにより、シャトカルマを復元し、ヨーガ・テラピーを確立しました。
しかし、アーサナやプラーナーヤーマといったハタ・ヨーガのいわばメインとなる部分が、こんにち一般に行なわれているそれと大きく異なっていることに驚かされます。
たかだか300年ほど前にしるされた「ホンモノのハタ・ヨーガ文献」の真意が、正しく伝えられていないのです。その間に、イギリスによるナータ派とハタ・ヨーガの大弾圧があったとしても……
3月から、定期講座で使用した資料を加筆訂正した『図説ゲーランダ・サンヒター』をもちいて、『ゲーランダ・サンヒターまとめ講座』を行ないます。
ゲーランダの意図をなるべく正確に復元するつもりです。『ゲーランダ・サンヒター』は、ハタ・ヨーガ文献のなかでは技術論がもっとも充実しているので、それができないと、もったいない。
ご来場をお待ちしています。
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