バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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【伊藤武のちょこっとサンスクリット語】

アーサナ Āsana आसन

シンハ・アーサナ(獅子のポーズ)。目をひん剥き、口・喉を全開にし、舌をベロンと伸ばし、好きなひとにはちょっと見せられない形相をして、
「ア~~~~~~~~」
と吼える。ただしくは、ナラシンハ・アーサナ(人獅子のポーズ)というべきでしょう。神々に敵対する魔族の王ヒラニヤカシプが、
「ほう、ヴィシュヌの野郎は遍在する、と? それなら、この壁のなかにも居やがる、ってか」
挑発するように喚(おめ)いて壁を蹴破ると、そこから現れたのが、ヴィシュヌの化身ナラシンハ。人間の体に獅子の顔、目を見開き、口・喉を全開にし、舌をベロンと伸ばし、世にも恐ろしい形相をして、
「ア~~~~~~~~」
哀れ、魔王は貪り食われてしまいます(詳しくは拙著『図説ヨーガ大全』p.430以下を参照)。
ところで、この「ア~」(ā)という発声、じつは、それじたいがマントラなのです。「あるのだ! 有るのだ! 在りつづけるのだ」という言霊(ことだま)を響かせた。
身体のいちばん深いところから生じる音と考えられているaは、日本語の「在る」の「あ」と同じ。つまり、aの言霊は「存ること」。このaに、やはり「存在」をあらわす音であるsを添えてasとすると、「在る、~である」というニュアンスの語根になります。
そして、このaを長母音のāにすると――。
「あ」は一瞬だけど、「あー」には時間が感じとれます。前回述べたとおり、āは時間の経過(さらに空間の拡大)をあらわしているのです。このāを語根化したのがās(在りつづける)。これを名詞化したのがアーサナ(āsana)。「座(おわ)しますこと」が原意で、座席、椅子、神仏像の台座、そして、ヨーガのポーズなどを指す語になります。
そうした深い意味に彩られたアーサナですから、ヨーガのポーズをするときも、その「在りかた」に心する(瞑想する)ことが肝要。
ところで、男女の交わりの体位もアーサナと呼んだりしますが、そのなかに同名のシンハ・アーサナがあります。ポーズも同じ。性典『アナンガ・ランガ』などによると、上になったほうが目をひん剥き、口・喉を全開にし、舌をベロンと伸ばし、好きなひとには見せられないはずの形相をして、
「ア~~~~~~~~」
と吼えるのだそうな。解釈に悩んでいます。
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