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バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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【コラム】ガタスタ・ヨーガ

【コラム】ガタスタ・ヨーガ

前回につづき『ゲーランダ・サンヒター』についてお話しさせていただきます。
『ゲーランダ』は、1700年ごろ、ベンガルでつくられたハタ・ヨーガ文献。作者については、ヴィシュヌ教徒であった、という以外なにも知られていません。しかし、わたしは、解読を進めた結果、彼はバウル、ないしはバウルに近しい人であった、と考えるようになりました。バウルについては↓
http://itotakeshi.blog33.fc2.com/blog-entry-152.html
1700年ごろ、ベンガル、ハタ・ヨーガ、ヴィシュヌ教徒……という条件に当てはまるのはバウル以外にいないからです。そして、バウルの作品として見れば、なるほど、この身をもって生まれたことを尊し、とするサハジャ思想が全編に脈打っています。
伝統的なヨーギンは、大地をしばしば「粗大なもの、輪廻の象徴」として厭います。けれども、人間は大地を離れては存在しえない。作者は、われわれの注意を、土から作られる「壺」に集中せしめます。
「壺は、しっかりと焼成(しょうせい)せねばならぬ。アーマ(生)な壺――つまり、焼いていない壺、焼きの甘い壺は、すぐに壊れてしまう」
「ハタ・ヨーガ文献」と前述しました。じっさい、そのように信じられています。ところが、作者は“ハタ・ヨーガ”という語を一度も使っていません。たしかに、ハタから材を借りてはいます。アーサナ、ムドラー、プラーナーヤーマなど。しかし、Ha(太陽)とṬha(月)に代表される二元性を止揚して空(くう)なるものに到る、というナータ派のハタ・ヨーガの体系に従うものではありません。
『ゲーランダ』は、“ガタスタ・ヨーガ”を名乗ります。「壺(Ghaṭa)として在るため(stha)のヨーガ」です。土から壺を作るのと同じプロセスで、われわれは聖化され、アートマンを容れるカラシャ(ご神体としての壺)になる。作者は、バラモンではなく、土器職人(シュードラ)の出身だったのかもしれません。ナータ派のゴーラクシャが、やはりバラモンではなく、牛飼い(シュードラ)の出身であったごとく。
土は、次の7段階を経て、聖なる壺カラシャになります。
①土を調整し、②チャクラ(ろくろ)を回して壺の形を引き出し、③生地を叩き締め、④乾燥させ、⑤焼成し、⑥装飾し、⑦聖水を容れる。
同様に、人はガタスタ・ヨーガの7段階を経て、アートマンの容器になります。
①シャトカルマ(6つの浄化法)、②アーサナ、③ムドラー、④プラティヤーハーラ(制感)、⑤プラーナーヤーマ、⑥ディヤーナ(禅定)、⑦サマーディ(三昧)。

最初のシャトカルマは、土の調整に相当します。池や川床から調達した土をよくこね、空気を抜き、じゃまなものを排除する。たとえば、砂粒が混ざっていれば、ろくろを高速で回すとき、指を切ってしまいます。空気が混ざっていれば、焼くと割れてしまいます。
同様に、生まれもったこの身をアートマンを容れる最高の器にするためには、まずじゃまなもの――アーマ(未消化物、汚物)を徹底して排除しなければなりません。ヨーガはここでアーユルヴェーダと理念を共有します。そのためのアーユルヴェーダの法が、催吐、瀉下、経鼻、浣腸、放血のパンチャカルマ(5つの処置)。ようするに、体内の汚れた血を取り出したり、アーユルヴェーダの薬剤を飲ませたり肛門から注入したりして、無理やり吐かせたり下痢させたりするわけです。
そして、そのヨーガ・バージョンが、ダウティ(清掃)、バスティ(浣腸)、ネーティ(鼻の清掃)、ラウリキー(腹部揺動)、トラータカ(凝視)、カパーラバーティ(頭蓋点灯)のシャトカルマ。
違いは、アーユルヴェーダでは医師が患者に施す、ヨーガでは行者がおのれに施す。そして前者では多様な薬剤や器具を用いるのに対し、後者では心を用いる――ということに尽きるでしょう。
たとえば、両方に浣腸があります。アーユルヴェーダでは、医者が患者の肛門に薬液を注入する。しかしヨーガでは、ヨーギンが意志の力を用いて、肛門から水を吸い上げる。もちろん、そんなこと一朝一夕にできるはずがありません。だからこそ、シャトカルマはそれ自体がサーダナ(行法)なのであり、ヨーギンは粗大な肉体を手がかりにし、微細な心にアプローチしてゆくのです。

伝統的なヨーガと異なり、ガタスタ・ヨーガには粗大と微細のあいだに断絶はありません。
YAJ定期講座『ゲーランダ・サンヒター』では、簡単にできて有益なシャトカルマから高度なサーダナまで、ハタ・ヨーガとはニュアンスを若干異にするガタスタ・ヨーガを実践的にお伝えします。
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