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バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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【コラム】「ゲーランダ・サンヒター講座」が始まります





YAJ定期講座、4月から『ゲーランダ・サンヒター』がスタートします。
『ゲーランダ』は、いうまでもなく「ハタ・ヨーガ三大古典」のひとつ。わたしは、といえば、サンスクリットからの訳を終え、読み解き、講座の準備を進めているのですが……。
とまどっています。サンスクリットの文と言葉使いからは、いろんなことが見えてきます……作者の気持ちとか、時代背景とか。なにより、テキストが若い。まるでつい最近書かれたみたいに。ナマイキで、ツッパった感じもします。

『ゲーランダ・サンヒター』の氏素姓(うじすじょう)を述べておきますと――。
親(作者)はヴィシュヌ神を信仰するヴェーダーンタの徒。1700年頃の、ベンガルの生まれで、まだ300歳ちょっと。
三大古典のあとの2つ――いずれも600歳くらいの『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』と『シヴァ・サンヒター』に比べるとたしか若造ですが、だから若い、と云っているのではありません。
20世紀ヨガ――クリシュナマチャリヤ、クヴァラヤーナンダ、アイアンガーの、アーサナ主体の健康志向で、“ヨーガ”ではなく“ヨガ”と表記すべきニューウェーブを先取りしているから、「若い」のです。そういえば、今あげたヨガの大家たちも、ヴィシュヌ神とヴェーダーンタの信徒でしたっけ。

ハタ・ヨーガの本家本元は、タントラのナータ派。ヴェーダーンタ派とは不倶戴天(ふぐたいてん)の関係にありました。じっさい、両派のサードゥは武器をとって戦いました。
しかし、ヴェーダーンタには、異教のものであっても良いものは積極的に採用する、という特性があります。いいとこ取り、悪くいえば、パクリ体質なのですが。
かつて菜食主義がさかんになったときは、すばやく菜食主義に転身し、現在にいたるまでその本家のごとく振る舞いつづけています。ヴェーダ儀礼には動物供犠が欠かせないはずなのに。
大乗仏教が隆盛をむかえると、その哲学をコピー。「空」と「アーラヤ識」を「ブラフマン」に置き換えると、シャンカラの不二一元論になる。ためにシャンカラは「仮面の仏教徒」と呼ばれました。
そして、今度はハタ・ヨーガに手を染める。18世紀はヴェーダーンタがハタ文献を大量生産する時代なのですが、『ゲーランダ』はその嚆矢(こうし)になった野心的な作品といえましょう。

内容は、ゲーランダなる師がチャンダカパーリという弟子に教えを説く――という体裁をとり、①シャトカルマ(身体浄化法)、②アーサナ(ポーズ)、③ムドラー(呼吸制御法)、④プラティヤーハーラ(制感法)、⑤プラーナーヤーマ(プラーナ制御法)、⑥ディヤーナ(瞑想)、⑦サマーディ(三昧)――の七支則から成ります。
文はナータ派の『ゴーラクシャ・パッダティ』や『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』からの引用が多いのですが、丸写しはしない。ちょこっと変える。「ゲーランダ」(ghe-ra-ṇḍa)という3音節の名前からして、「ゴーラクシャ」(go-ra-kṣa)の3音節に細工を施したもの。万事がこの調子。だから「ナマイキなツッパり」に思えて仕方ないのです。
そして、フィジカルに徹し、タントラ色を極力排している。タントラから離れたヨーガは、もはや“ハタ”とはいえないのですが、ここはしっかりとケジメをつけています。ゴーラクシャもどきのゲーランダ師は、“ハタ・ヨーガ”を一度も名乗っていない。“ガタスタ・ヨーガ”を称しています。
ガタスタ・ヨーガ(ghaṭastha-yoga)――「壺で在るためのヨーガ」ぐらいの意味。土器職人が、土を選び、土をこね、ろくろ(チャクラ)を回して成形し、焼き上げて、液体を容れる壺を成すごとく、身体を浄化法やアーサナで錬成し、クンダリニーの火で焼き上げて、
――ヴィシュヌ(アートマン)を容れる器とするためのヨーガ
という自負がこめられているのでしょう。
たしかに、ここに説かれるシャトカルマやアーサナは、他のどんなハタ文献をも凌ぐ貴重なもので、アーユルヴェーダやヨガ療法との接点を提供します。ですから、この講座ではシャトカルマとアーサナに多くの時間を割くことになります。
そして、わたしは、この聖典の解釈を、自分のフィールドであるタントラからではなく、これまで縁のなかったクヴァラヤーナンダやアイアンガー(彼らも“ガタスタ”を名乗れば、真の“ハタ”との混乱が見られずにすんだのに)の著作から探さなければならない。だから「とまどっている」のです。
ともあれ、中世のハタ・ヨーガと現代ヨガの架け橋となるユニークなハタ文献、『ゲーランダ・サンヒター』。ご来場をお待ちしています。


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