バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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【コラム】バウル




「バウルの修行に行きますので、シヴァ・サンヒター講座にはもう来られません」
ちょうど1年ほど前、そんなことをおっしゃるかたがいました。
「え、バウル、まじ?」
仰天しました。インドに、ヨーガ、音楽、ダンス、医学、料理、武術を学びに行く——というのは、いまや珍しくない。しかし、まさか、バウルをやろうなんてひとが現われるなんて……。

バウルは、いってみれば、詩をうたうサードゥ。インドの西ベンガル州とバングラデシュ(東ベンガル)にまたがって存在します。とうぜん、インドのバウルはヒンドゥー、バングラのバウルはムスリムであり、ヒンドゥー・バウルはヴァイシュナヴァ(ヴィシュヌ教徒)を名のっていますが、ヴィシュヌ正統派からみれば、まったくの異端ということになりましょう。
じっさい、かれらは「ヴァイシュナヴァ・サハジヤー」にカテゴライズされていますが、サハジヤーまたはサハジャは、ヴィシュヌ教とは180度相反するコンセプトなのですから。
☞ http://itotakeshi.blog33.fc2.com/blog-entry-83.html
日本の空海と同じころに生きた仏教タントラの大成就者サラハが打ち出した「生まれもった身体に、すでに悟りが具わっている」というのがサハジャ思想で、これが後期密教やハタ・ヨーガの推進力になっていきます。
サラハやルーイーやカーンハといった仏教タントラの大成就者は、おのれの悟りを詩をうたうことで表現しました。バウルはそうした「歌う密教行者」の直系の子孫なのです。仏教詩人がなぜヴィシュヌ教詩人に、あるいはムスリムの吟遊詩人になったかの説明は、ここでは割愛させていただきます。ともあれ、バウルは、ヴィシュヌ教とはいっても、

♪わが愛しき神(クリシュナ) おお わが神 あなたにまみえたい
 あなたとともにいたい おお わが神 いつの日か あなたのおそばにいたい

と(もっとも、これはジョージ・ハリスンの『マイ・スイート・ロード』なのですが)、神への愛を切々と訴えかけるわけでは決してない。バウルの詩にクリシュナやラーダーの名が織り込まれていたとしても、それは、おのれ自身のアートマンとシャクティをあらわす記号にほかなりません。
かれらが詠うのは、おのれの内に広がる宇宙の情景。プラーナやチャクラやクンダリニーがくり広げる神秘のドラマ。つまり、タントラであり、ハタ・ヨーガなのです。
バウル(Baul)という言葉は、サンスクリットのヴァートゥラ(Vātula)のベンガル訛りで、「風狂者」と訳されましょう。この場合の風(ヴァータ)はプラーナのことであり、プラーナを操作するハタ・ヨーガを行じて、イカレてしまった(悟った)人がヴァートゥラ。
『シヴァ・サンヒター』Ⅲ‐70は、ハタ・ヨーガの成就者のことを、このように述べています。
「8ダンダ(3時間12分)、ヨーギンの風(プラーナ)が不動となり得たならば、賢き者は、みずからの力により、ヴァートゥラのごとく親指の上に[全宇宙を]安立しよう」
ヴァートゥラを、現代の「アストロノーツ」(宇宙飛行士)と対比させて、「サイコノーツ」(霊的飛行士)と呼んでもいいかもしれません。前者が物質的リアリティの母胎たる「外なるスペース」を勇敢に調査する物質主義者・科学者・冒険家であるとすれば、後者は「内なるスペース」に深く沈潜し、潜在意識に住まう天使や悪魔と遭遇し、これと対峙(たいじ)するのです。

さて、バウルになった佐藤友美さんの一連のイベントが進行中です。10月8日は、わたしがお相手させていただきます。パフォーマンスもあり。ぜひ、足をお運びください。

10月8日(日) 13:00〜15:00
パルバティ・バウル来日ツアー2018「バウルの響き」関連企画
伊藤武先生をお招きして:「バウルと女神、そしてヨーガ」
聞き手:佐藤友美(パルバティ・バウルの弟子)
参加費1000円 定員15名
開場:Deepdan(東京・池ノ上)【http://www. deepdan.com/】
予約は【echoesofbaul@gmail.com】まで
ホームページ:【www.echoesofbaul.info】
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