バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

Entries

【時代は変わる?】伊藤武コラム

ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞しました。タゴールや川端康成と並んだわけですが、もちろん賛否両論。否のなかには、「ポップ・ミュージックの歌詞が文学賞に値するのか」といったものだけではなく、「反逆児のイメージで売ってきたディランも、ノーベル賞の権威にひれ伏すのか」というのもあるようです。たしかに、
——どれだけ砲弾をぶっ放したら、武器と永久にオサラバする気になれるんだ?
と歌ったディランに、ダイナマイトの生みの親にちなんだ賞は不似合いかもしれません。
しかし、彼が反逆児であるなら、それは社会に対してというより、自身の音楽に対してでしょう。スタイルをどんどんと変えていく。
『風に吹かれて』や『時代は変わる』のような大ヒットした楽曲をステージでやるときも、定型がない。そのときそのときでアレンジを変える。彼の本質は、真に偉大なポップ・ミュージシャンというべきです。
そして、彼の詩がノーベル文学賞を受賞したというのであれば、かつてLPも何枚か買ったわたしとしては、単純に祝福したい。もっとも、これを書いている時点で、ノーベル財団はディランと連絡が取れないらしく、彼は受賞を拒否する気ではないか、とも云われているようですが。

ディランがデビューした60年代前半、ビートルズもいました。今年6月に亡くなったボクサーのモハメド・アリ(当時カシアス・クレイ)もいました。ディランの詩は、ジョン・レノンをはじめ、英語で歌われるポップ・ミュージック界全体に影響を与えました。
ディランが、アリの試合にインスパイアされたことはよく知られています。アリが初めて世界チャンピオンになったとき、彼は、
——今朝オレはシャドーボクシングをした。この調子なら、クレイ(アリ)とも戦えるぜ
と歌っています。
アリもディランから影響を受けたかもしれません。彼は韻を踏んだ奇妙な詩を詠みあげて試合を盛り上げるポップ・ボクサーでした。アリはラップの祖ともいわれています。そして、ディランとアリは、仲よしだったのです。

では、詩とは何でしょう? ひとことで云うなら、言葉の魔法。
言葉は、たんに情報伝達のための記号。どのような人間でも、同じ文化圏にいれば、同じ言葉を使います。王も庶民もたいして変わらない。が、同じ言葉を使いながら、それを記号をはるかに超越した、人の魂をゆさぶる魔法に変えてしまう人たちがいます。
それにかんしては、純粋文学も大衆歌謡も違いはありません。ディランのようなシンガー・ソングライターは、むかしの吟遊詩人のような存在なのでしょう。

1960年代後半。当時のアメリカは、人種差別の激化、ベトナム戦争の拡大、公害の深刻化など、効率と豊かさを追求する西洋社会のゆがみが随所で露呈し、混迷を深めていました。真の反逆児モハメド・アリは、徴兵拒否をしてアメリカ政府と戦い、タイトルを剥奪されました。
そんななか、ボブ・ディランやビートルズの歌は、人びとの心に沁みいりました。ヒッピーの時代で、若者は、時代は変わる、明日はよくなる、21世紀はすばらしい時代になる、と夢みました。
それから半世紀がたちました。時代は変わったでしょうか?
ますます酷くなった、と思わないでもありません。いや、いつの時代も、人びとの心はたいして変わらず、失望をくり返しています。そして、いつの時代も、それを慰め、希望に変えるのが、詩人の役割なのかもしれません。
ボブ・ディランのノーベル賞受賞の報を受け、とりとめのないことを書いてしまいました。
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

インド作家_伊藤武(クルシー)

Author:インド作家_伊藤武(クルシー)
 
メルマガ『満月通信』のコラムを載せていきます。
 
講座案内等はこちらでお知らせしています。
http://malini.blog105.fc2.com/

お問い合わせはこちらまで。
yaj612@gmail.com

twitter

最新記事

最新トラックバック

右サイドメニュー

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR