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作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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シヴァ密教【伊藤武のかきおろしコラム】



全16回、64時間におよんだ「ヨーガ・スートラ講座」(@東京)も、おかげさまで、好評をもって終えることができました。『ヨーガ・スートラ』の言葉・文・哲学におけるクエッションマークはすべて解明できた、と自負しています。
6月からは、続編として「シヴァ・サンヒター講座」を予定しています。

『シヴァ・サンヒター』は、わくわく、心おどる文書です。インドよりもバリ島に色濃く残されたシヴァ密教と、カジュラーホ寺院の光と影が深い綾(あや)をつむぐ妖(あや)しいエロティシズムと、ハタ・ヨーガ開祖ゴーラクシャの本物のハタを、いっしょ盛りにしたような。
ヨーガ愛好家にあいだでは名の知れた聖典ですが、しかし、きちんとした理解は、世界を見わたしても、これまで一度もなされなかった。というのは、背景となるシヴァ派の思想や行法が謎に包まれていたからです。
インド学者たちも、『バガヴァッド・ギーター』やヴェーダーンタは熱心に研究していますが、シヴァ派を置き去りにしてきました。
しかし、21世紀に入って、シヴァ派関連の文献がつぎつぎとネットで発表されるようになりました。今ようやく、『ヨーガ・スートラ』から、ゴーラクシャのハタ・ヨーガを経て、『シヴァ・サンヒター』にいたる、「シヴァ密教」の素顔が見えてきたように思われます。
その歴史をごく簡単に述べると——

7、8世紀、『ヨーガ・スートラ』を密教化するかたちで、最初のシヴァ密教「聖典シヴァ派」がインドの中央部で興り、南のタミルナードゥを中心に広まります。この宗派では、『ヨーガ・スートラ』の作者パタンジャリが、シヴァ神の従者として神格化されるにいたりました。
南インドのあの素晴らしいナタラージャの像は、聖典シヴァ派の哲学をみごとに造形化したものといえましょう。ダンシング・シヴァは、ダンシング宇宙。溶けて他のものへと転変してゆくエネルギーの、無限のパターンの、絶え間ないフローを表わしています。
ナタラージャは、プラクリティの舞いです。むろん、プラクリティとともに踏(おど)るシヴァはプルシャにほかならなりません。しかし、プルシャとプラクリティの間には、不可視の何かが存在する。「シヴァーヤ・ナマハ」(シヴァに礼拝)のシヴァとナマハの間に、「ヤ」のあるごとく……
二元論の『ヨーガ・スートラ』に霊感を受けた聖典シヴァ派はあくまでも二元論でしたが、これが北のカシミールに入って、プルシャとプラクリティはまったくの同一である——とする一元論のカシミール・シヴァ派が生まれ、またカシミール・シヴァ派から女神崇拝にウエイトを置いたクラ派が派生します。
カシミール・シヴァ派とクラ派はほとんど同体ですが、前者が比較的カシミール周辺にとどまったのに対し、「この世は素晴らしいもの」とする傾向がより濃厚なクラ派はすぐにカシミールを旅立ち、インド全土に広がっていきます。エロティックな彫刻で知られるカジュラーホ寺院群(10〜12世紀)は、このクラ派に属しています。つまり、成就を得るもっとも強力な修法として、男女がペアになって行なう性的ヨーガが錬られました。
クラ派は、ベンガルで、マツェーンドラという注目すべき聖者を得ます。彼は、ブッダとシヴァと、そして女神を同時に礼拝するシッダ(タントラ行者)でした。当時、東インドでさかえたインド最後の仏教王国パーラ朝(8〜12世紀)では、仏教とシヴァ教がひとつの宗教と見なされていたのです。
そのマツェーンドラの弟子がシッダの王、ゴーラクシャ。仏教のヴァジュラヤーナ(金剛乗)とシヴァ派とクラ派の行者集団を統一するかたちでナータ派を立ち上げ、その実修法としてハタ・ヨーガを集大成します。
インド仏教の滅亡後も、ゴーラクシャのハタ・ヨーガは、シヴァ教、ヴィシュヌ教、女神教を問わず、さらにはイスラム神秘主義のスーフィーをふくめ、インドのさまざまな宗派で採用されます。
『シヴァ・サンヒター』の持ち主であるシュリー・クラ派(南インドで栄えたクラ派の分派)がハタ・ヨーガを採りいれるのも、自然な流れでした。

さて、講義では、サンスクリットから訳出したこのテキストを、豊富な図版を用い、シヴァ密教の伝説、その思想、行法、佐保田訳ではカットされていたヴァジュローリー(性的ヨーガの中心的技法)をふくめた神秘的な秘義とともに解説します。
ハタ・ヨーガの根っこ(始まり)がわかれば、アーサナの本当の輝きも、プラーナーヤーマの秘密も見えてきます。
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