バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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辛子蓮根(からしれんこん)【伊藤武のかきおろしコラム】



熊本県を中心に断続的な地震に苦しめられています。5年前の東日本大震災のときにしたためた文をいまいちど、くり返させていただきます。
被災したみなさま、心を折らないでください。希望の灯を絶やさないでください。希望こそは人間の最大の才能だと思います。6500万年前、なんらかの天変地異で繁栄をきわめた恐竜族が一気に滅びたのは、かれらに希望がなかったからだと思います。希望があれば、破壊を乗り越えることができます。闇を払う朝日を引き寄せることができます。立ち上がることができます。
熊本のシンボルともいえる熊本城も大きく損壊しましたが、あの大地震であの程度のダメージですんだのはむしろ奇跡的なことと思います。被害の程度を比較するのは不謹慎かもしれませんが、昨年のネパール地震では、カトマンドゥ盆地の由緒ある歴史建造物の大半が跡形もなく全壊してしまいましたから。
その熊本城に生まれた料理があります。

加藤家改易後に熊本城を任された細川忠利(1586〜1641年)といえば、武芸好きで知られる大名です。彼自身、柳生新影流の殿様芸を越えた使い手で、晩年の宮本武蔵を招き、客人として遇したりもしました。しかし、幼児のころは虚弱体質でした。長じるにつれ、剣術の稽古を介し壮健になりましたが、熊本城に入ったころはストレスで食が細り、健康を害していました。
忠利公と親しかった玄宅という禅僧がそれを案じて、からだに良いレンコンを食べること勧めました。レンコンは、熊本城のお堀で、非常食として栽培されていたのです。そこで藩の賄方(まかないがた)であった平五郎が、少しでも食が進むように考案したのがあの辛子蓮根。忠利公はそれによって食欲と健康を取り戻したということです。
辛子蓮根は家庭でもかんたんにつくれます。詳しい製法はネットをご覧いただくとして、ざっとしるすと——
1. たわしでよく洗い、両端を切り落としておいたレンコンを、15分ほどゆでる。
2. 味噌、粉辛子、ミリンなどを混ぜ合わせた辛子味噌をレンコンの穴に隙間なく詰める。
3. そら豆粉(なければ小麦粉)+水+ターメリックで濃いめにつくった揚げ衣をたっぷりとつけ、中温で揚げる。
4. 適当に輪切りにしていただく。

シャキッとした歯ざわりと絶妙な辛さの取り合わせがなんとも素敵な料理です。揚げたての辛子蓮根は、揚げたての蓮根の天ぷら同様、たいへんおいしい。
衣にターメリックを加えるくらいですから、そら豆粉をベースン(ひよこ豆の粉)に、辛子味噌をマサラやキーマに変えるなど、インド的バリエーションも楽しめそうです。
おいしいだけではありません。忠利公を救った辛子蓮根はじっさい、健康にもよろしい。
レンコンについては以前にも書きました。
http://itotakeshi.blog33.fc2.com/blog-entry-74.html
レンコンには多くの薬効がありますが、生命のもとである血液をつくる造血作用にすぐれ、最近では花粉症に効く野菜としても注目されています。
辛子(マスタード)は食欲増進効果のほか、アーユルヴェーダのテキストには、鼻炎、偏頭痛、排尿障害、鼓腸、胸部疾患を癒す、とあります。
しかし、1984年に真空パック辛子蓮根によるボツリヌス菌の集団食中毒事件が発生して以来、九州での辛子蓮根の消費は落ち込んでいるそうです。地震からの復興や熊本城の修復とともに、辛子蓮根の人気も復活してほしいものです。
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