バン・ボーラ!──伊藤武のなまけブログ

作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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【ちょこっとサンスクリット】プラナヴァ praṇava प्रणव


プラナヴァとは、聖音Oṃのこと。pra-√nu(唸る/鳴り響く/反響する/ハミングする/讃える)に由来する語です。
praには「最初の、最高の」などの意味がありますから、「宇宙創造の最初に鳴り響いた音」にして、「神を讃える最高の音」。
シヴァ神の種字フーン(Hūṃ)とシャクティの種字フリーン(Hrīṃ)も“プラナヴァ”とよばれますが、ここではOṃについて書きます。
Oṃは、慣例的に“オーム”ととしるされることが多いのですが、ṃは鼻音——文字どおり口を閉ざし鼻から出す音なので、「ん」にしか聞こえません。ですから、Oṃをカナ表記するのであれば、“オーン”のほうがよろしいでしょう。
Oṃはデーヴァナーガリーでは、ओंまたはॐとしるされ、写本を見ても両方が出てきますが、若干発音が異なります。
ओंのビンドゥ(文字の右上の・)は、しっかり口を閉じた鼻音(アヌスワーラ)。
ॐは正確にローマナイズするのであれば、Om̐。チャンドラ(三日月形の꒡)のついたビンドゥで、口を完全には閉じない鼻音(アヌナーシカ)。前者よりもやわらかな響きになります。
どちらかを選ぶかは好みのほか、それぞれに象徴的な意味があるようです。

象徴といえば、OṃのOはAとUが融合した二重母音ですから、OṃはAuṃ(アウン)に置換され、このA・U・Mの3字が、
3つのものから成るあらゆるものの象徴となり得ます。
A・U・Mが、「ブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァ」の三大神を表わすことは、どなたもご存知でしょう。
ほかにも、「創造・維持・破壊」の行為、「身体・精神・霊魂」からなる人間、「行為・知識・意志」の三シャクティ(力)、「
サットワ・ラジャス・タマス」の三グナ、「満ちゆく月・満月・欠けゆく月」の月の三相、「地・空・天」の三界、「腹・胸・頭」の身体の3つの腔(こう)などなど。

『ヨーガ・スートラ』にいわく。
—— tasya vācakaḥ praṇavaḥ. taj-japas tad-artha-bhāvanam.(Ⅰ‐27, 28)
「かれ(自在神)の象徴語はプラナヴァ。その念誦は、その意味するもの(自在神)への祈念」
そして、自在神への祈念であるOṃを誦えることで、無想三昧、つまり独存(=解脱)に到ることができる(Ⅰ‐23)、とあります。
「え、オーンと誦えるだけで、イケちゃうの?」
と思ってしまいますが、もちろんただ唱えてもダメ。各セクトに秘義があります。そのひとつ、カシミール・シヴァ派(トリカ)の聖典によると——
「腹・胸・頭」の身体の3つの腔にA・U・Mを響かせるように、アウンを発声する。すなわち、腹でA、胸でU、頭でM。時間は1字につき1マートラー(約1秒)、アウンで3マートラー。
これを延々とくり返します。頭蓋骨内部の空間にMを響かせるときはアヌナーシカ。つまり、口を完全には閉ざさない鼻音。完全に閉じてしまうと、そこで「終わってしまう」からです。
「腹・胸・頭」の3つの腔にA・U・Mを響かせる(もちろん集中する)のは行者の努力によりますが、やがて、努力を超越したところで「それ」が起きる。
まず、眉間の一点が光り出し、そこにॐが生じる——自然に鳴り出すということです。
光とॐはじょじょに高度を上げていく。額の奥、頭頂の泉門(せんもん)あたりへと。このとき、行者は、時間と空間を超越する神秘体験を得る。
光とॐは、身体を離れ、頭上の空間に移る。そして、行者の意識は、そのなかに没入してゆく。
「これがパタンジャリ(『ヨーガ・スートラ』)にいう、プラナヴァ念誦による無想三昧である」
と聖典にしるされています。
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Comment

 

難しいですけど、
マントラのオ-ムより真言のオンの方がオリジナルに
近いってことだったら面白いですね。
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  • 2017.08/13 19:11分 
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